電源トランス強化バージョン19AQ5 単管ヘッドフォンアンプ製作

 春日無線変圧器さんから発売されている19AQ5単管ヘッドフォンアンプはとても素晴らしいヘッドフォンアンプです。価格からは想像もつかない心地よい音がヘッドフォンから聞こえてきます。そして、限定版の19AQ5単管ヘッドフォンアンプを予約することができました。その限定版で使用される電源強化バージョンの電源トランスを購入したので交換する予定だったのですが、電源トランスが余ってしまうのももったいないと思い、交換ではなく新たに1台作ってみようと思い立ったのです。;
 春日無線変圧器さんで購入したのは、電源トランスと出力トランスのみ。秋葉原中を集めました。抵抗は海神無線と千石通商、コンデンサは海神無線、MT7のソケットも海神無線、その他のパーツは手持ちであった物を使用しました。しかし、集めるとなるととても大変で、パーツセットの有難みを感じた次第です。

パーツのレイアウト
 まずは、レイアウトです。電源トランスがやや大きくなっていますので、その分の変更と、電源トランスからの配線は一か所の穴を通してシャーシ内に入れるようになります。
 大半のレイアウトはオリジナルのレイアウトですが、入力端子はやはり背面に移動させて作ることにしました。
 早速穴開けのためにPCでレイアウトを仕直して、印刷した紙をタカチのYM-200に貼ります。
シャーシの穴開け後
 穴開けが終わったシャーシです。この状態でSWの穴は5個です。始めは高圧側は125Vだけの予定でした。
 穴開けは時間がかかるのですが、今回は2度目でしたのでだいぶ手早くこなすことができました。バリ取りもすんなりとできました。
パーツの取り付け
 早速、軽いパーツをシャーシに取り付けていきます。今回使用したヘッドフォンジャックは金メッキの物を入手しましたので、それを使用してみることにします。
ラグ端子などの取り付け
 ラグ端子を付け、入力端子からの配線をしました。この段階の入力端子からの配線はシールド線を使用しています。
電源トランス取り付け
 電源トランスを取り付け、リード線をシャーシ内に入れます。高圧の電圧を切り替える予定ではなかったので、リード線は7本です。それでも結構な量なので、穴に通すのが大変でした。
 電源の平滑部もこの段階は200V耐圧の電解コンデンサを使用しています。ダイオードブリッジは手元にあったW06です。逆耐圧が600Vのもので余裕がありすぎますが、のちのち150Vを使うかもしれないと思っていましたので、600V耐圧のブリッジにしました。
配線完了
 電源トランスを取り付けてからの配線は、一気にやってしまいました。その間、夢中になっていたのと、デジカメの具合がよくなかったので、あまり写真を撮れませんでした。
 一度作っているので、配線はとても楽にこなすことができましたが、ヒータ電圧を切り替えるSWのところは悩んでしまい、初代のアンプを開腹して配線を確かめながら行いました。
ヒータ電圧、LED個数切替SW部
 ヒータ電圧切替SWと、カソードのLEDの個数切替SWの部分です。今回は電源トランスに余裕があるため、LEDの個数切替は1個、2個、3個としました。6AQ5系を使用する場合はLEDが3個、408A、6AK5を使用する場合はLEDが2個。6AG5、6BC5を使用する場合はLEDを1個にします。
電源平滑部
 リップルフィルタ部です。先に書きましたが、125Vのみを使用する想定でしたので、電解コンデンサの耐圧は200Vです。定数もオリジナルと同じです。
配線
 今回使用した電源トランスはヒータ捲線の電流容量が0.63Aありますので、充分に5AQ5でも充分な容量があります。高圧の捲線も50mAの容量がありますので、単管あたり25mAまで流すことができる計算です。
 初代に入れたスイッチング電源を今回は使用しませんので、その分のスペースが空いています。
 入力トランスからVRまでとVRからグリッドまでの配線とカソードLED個数切替の配線はLANケーブル(10BaseTカテゴリ5)を使用しました。
出力部の配線
 出力トランスはオリジナルと同じOUT-41-357です。このヘッドフォンジャックは配線をするときに左右が交差するのですが、まぁ大丈夫でしょう。
完成
 完成した電源強化バージョンの19AQ5単管ヘッドフォンアンプです。電源トランスのリード線部分がむき出しになりますので、スミチューブで覆いました。しかし、トランスもむき出しのままですから、なにかケースを考えたいと思っています。
 さぁ19AQ5を挿して電源オン。LEDは3個使用していますが、電源部のレギュレーションが良いため、しっかりとした音が出ます。この強化バージョンのトランスを使用したバージョンもなかなかいい感じに仕上がりました。
高圧切替改造
 でき上がってからふと思ったのが、19AQ5のプレート電圧をもう少し高くしてみたいと思ったのです。早速高圧の125Vと150Vを切り替えるSWを付けました。
トランスの配線
 125Vに加え150V端子にリード線を半田付けをして、シャーシ内に引き込みました。いやぁ〜、一つの穴にリード線8本は入れるのに苦労をしました。なんとか引き込めましたが、これが限界ですね。
SW部の文字入れシール
 初代のSW部はインスタントレタリングで文字入れをしたのですが、今回は透明なシールにインクジェットプリンタで印刷して貼り付けました。貼ってあることが目立ちますが、書体が選べることと、こすれても大丈夫な点がメリットです。SWの数は6個になりました。
高圧切替SW
 高圧の125Vと150Vを切り替える為の配線を行いました。そして電解コンデンサの耐圧も200Vから250Vに変更。最終段の電解コンデンサは100μFを2個並列にしてみました。
100μFを2個並列
 最終段を100μF2個並列にしていますので、200μFになりました。このことで若干低域の出が良くなったように感じます。とくに19AQ5(6AQ5系)を使用したときに感じました。
OSコンをパスコンとして
 更に改造を加えます。LEDと並列にパスコンを入れました。普通の電解コンデンサではなく、サンヨーのOSコンです。このコンデンサはとても特性の良いコンデンサでして、音声信号を流しても、高域の特性が悪くなることはありません。
初段をOPAMP化
 更に実験です。入力トランスによるドライブをOPAMP化してみました。しかし、OPAMPは±両電源が必要なので、ちょっと工夫をしました。ヒータ捲線の18Vを倍電圧整流し、中点を0Vとすることで±両電源を得て、定電圧部に三端子レギュレータ7815と7915を使用して±15Vを得ています。
 回路はとてもシンプルな非反転増幅でゲインは約4倍弱です。交流結合とし、カップリングコンデンサはありふれたもので0.22μFです。回路図を掲載しておきます。
 使用したOPAMPは8PINの二回路入りです。ICソケットにすることで、真空管を差し替えるような手軽さでOPAMPを交換することができます。
 回路がシンプルにできたお陰かは判りませんが、OPAMPの個性はあまり強く感じない音が出てきます。低域はトランスよりもズバッと出てきますが、決して出過ぎなわけでもなく、ブーミーでもありません。聴きやすい音を出してくれます。
 でも、これを推奨するつもりは全くありません。なぜなら入力トランスを使った場合でも充分に低域が出ています。あくまでも実験として行っただけでして、他の方がこの音を聴いて心地よく感じられるかは判りませんし、ヘッドフォン次第とも思います。
平滑部の改造
 電源平滑部の最終段の100μFをパラにして200μFとしていたのですが、OPAMPの基板を取り付ける際にスペースがきつかったので外していました。作者のかたから2段目をパラにした方が効果があるとのささやきがありましたので、早速2段目の100μFをパラにしてスペース的にギチギチなので、ショートしないように取り付けて200μFにしてみました。l
 結果は低域に粘りが出てきた感じがします。どこの容量を増やすことで効果どうかわるというのが面白いですね。
追加穴開け
 19AQ5単管ヘッドフォンアンプ界の巷で有名になっている球「EL91」。この球で是非とも聴いてみたくなりまして、2台目に製作した電源強化版に改造を加えることにしました。
 EL91は19AQ5とはピン配置が違い互換性がありませんが、このアンプで使用する上で違うのはSGのピンのようです。また好都合でこのアンプでは7ピンがNCとなっています。EL91を使用する際には6ピンがNCになればいいようですので、SWで切り替えることが出来ます。
 そのSWを取り付けるための穴を開けました。ソケットの電源トランス側が5、6、7ピンのため、最短で切り替えられる位置にしました。
OPAMP基板外しとSW取り付け
 早速取り付けたSWです。二回路二接点のごく普通のSWです。もうお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、ここには初段のOPAMP基板がついていたはずですが…。そうです、この改造にあたり初段OPAMPを外して初段は入力トランスに戻しました。
SWの配線
 OUTPUTトランスの3KΩ端子からSWの中点に配線。7MTソケットの6ピンから手前側の接点へ、7ピンから奥側の接点へ配線します。
 これによりSWを手前に倒したときにEL91、奥側に倒したときに19AQ5系に切り替えられるようにしました。
 改造はこれだけ。それであのEL91を挿して聴くことが出来ます。とてもワクワクします。1本500円ですから、高くありませんし。
 MullardのEL91だと1本945円ですから約半額。噂ではMullardよりも良いとか。ということで、ラジデパ3Fのサンエイ電機さんでVALVE ELECTRONIC製のEL91を購入してきました。
SWにラベルを貼る
 改造も終わり、SWのところにシールを貼りました。これを間違えると大変なことになりますから。
EL91試聴開始
 早速、EL91を挿して試聴開始。中域がとてもとてもまろやかで包み込まれるような感じです。高域は素直に伸びており、低域もしっかりと出ています。ボーカルを聴くときなどにはとてもいい感じで、まったりと包み込まれながら聴くことが出来ます。改造費はSW代の135円と配線を少し。穴を1か所開けてハイ終わり。
 回路図を掲載しておりますが、とても簡単にできます。しかし、オペレーションを間違えるとアンプを壊すことになるかもしれませんので、くれぐれも気をつけて行うようにしたいと思います。


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